今日の星影の館殺人事件はどうかな?
修といっしょに狩猟に出かけたアナタ。
アナタ「その腰に巻いてる紐は何ですか?」
修「佐比山は見ての通り樹木が多く、昼間でも薄暗い。毎日狩りに出る俺ですら迷い易いのだ。だから、家と自分の体をこうして紐で繋いでいるんだよ」
アナタ「いわゆる命綱というやつですね」
アナタ(僕には付けてくれなかったあたり、いざとなったら見捨てるつもりなんだろうな)
アナタ「おや、あそこに建物のようなものが見えますね」
修「ただの廃屋だ。今は誰も住んでいない。あんまりよそ見をするな」
アナタ「すみません。職業柄、ついあちこちを観察してしまんですよ」
修「探偵とは好奇心を抑えられないガキみたいな職業なのだな」
アナタ「それはそうと、僕、猟銃なんて初めて持ちましたが、これ結構重いんですね。素人が撃ったところで標的にちゃんと当たるかどうか・・・」
修「撃ち方ならさっき教えたろう。もう忘れたのか」
アナタ「いえ、覚えてますが、勇気がですね・・・」
修「情けない奴だ。それでも男か。
さっきも言った通り、こんな山に住んでいるから、家で保管している時でも銃に弾は込めて置いてある。俺たちが扱うのは、410番の中折れ式単発銃。弾はスラッグ弾だ。
410番は射撃の音が小さく、反動も少ない。ほかの銃より重さもない。
素人の腕なんぞ期待しちゃいない。いざという時の威嚇射撃でもできれば御の字だ。
俺の合図でいつでも撃てるように準備しておけ。心の準備もな」
アナタ「あれ?この猟銃、よく見ると・・・」
修「しっ!声を出すな!!
体勢を低くして、そこの茂みに隠れろ。音を立てるなよ。
・・・見えるか。あれがコワバミドリだ」
アナタ「随分派手な色をしてるんですね。辺りは暗いのに、やけにくっきりと見える」
修「奴に天敵はいない。他の動物を違って、環境に合わせた体色の適応など不要なのだ。
コワバミドリのすぐそばにノウサギがいる。奴が腹を空かせていれば、おもしろいものが見られるぞ」
ガサガサガサ!!!
アナタ「あ!コワガミドリがノウサギの喉と頭を!」
修「腹を空かせたコワバミドリは近くに人間がいなければ、山の動物の喉を食う。
だが、あいつはどうやら餓死寸前だったようだ。喉どころか頭までも食っちまうとはな。
見て見ろ。体まで食おうとしているぞ」
アナタ「いや、もう、結構ですから・・・」
修「本当に根性のない男だな。
仕方あるまい。このあたりで仕留めてやると・・・」
お イ お サ む
アンタ「今の声はどこから?目の前から聞こえたような・・・
修さん、あなたのことを呼んでいたように聞こえましたが」
修「・・・」
アナタ「修さん?」
修「ズブの素人を連れ立って軽く遊ぶだけのつもりだったが、そうか、こいつがそうだったか。こんなところで会えるとはな」
アナタ(彼の纏う空気が変わった)
ど コ に イ る
コワバミドリはこちらに気づいていないようだ。
アナタ(ああやって食った声を発し、獲物を呼び寄せるのか)
お イ お サ む
聞こえてくるのは年配の男の声だ。苦しそうで、今にも息絶えそうなほどか細い。このまま放っとけば死んでしまいそうな声だ。
アナタ(声は確かにコワバミドリの方から聞こえるように思う。だが・・・)
に ゲ な サ い
アナタ「修さん。僕も館に来る途中、山の中から声を聞きました。あれは、おそらくコワバミドリの罠だったでしょうが、今度こそ、近くに人間がいる可能性もあるのではないですか?」
修「お前は何もわかっちゃいない。
コワバミドリは知能が低い。人の声を食ってまねたくらいじゃ、人間様の賢さに敵わないんだよ。
いいか探偵。この山に居座ろうってんなら、これだけは覚えておけ。
声を食ったコワバミドリは、一度に5文字までしかしゃべれない」
ドォオオオオン!!!!
ぎゃあああああ!!!!
修「そして、食われた獲物が最後に発した3通りの言葉しか使えない」
アナタ「じゃあ、今のコワバミドリが食った声の主は・・・」
修「・・・俺の親父だよ」
アンタ「そんな・・・」
修「弾を再装填する。周りを見ておけ。
最後にもう一つ教えておいてやる」
て ヲ だ ス な
アナタ「え?」
修「後ろだ!来るぞ、撃て!!!!」
アナタ「!!!弾が出ない?」
こ ド も ニ は
アナタ「うわああああ!!!」
修「馬鹿野郎、何やってんだ!伏せろ!」
ドォオオオオン!!!!
ギャッッッ!!!!
し ン い チ
修「くそ、急所を外したか。だが、これで逃げられねぇだろ」
こ ド も ニ は
修「待ってろ!!!今、ぶち殺してやるからな!」
て ヲ だ ス な
修「チッ、逃がしたか・・・
生きてるか、探偵」
アナタ「何とか・・・
あの、ありがとうございました。お陰で命拾いしました」
修「興が冷めた。帰るぞ」
アナタ「はい」
修「この俺が取り逃がすとは・・・次に会ったら、必ず仕留めてやる」
アナタ「あなたのことを少し勘違いしていたようです。とても勇敢で、そして、強い方なんですね」
修「・・・男に煽てられると寒気がするものなのだな。
コワバミドリの狩猟は、普通二人一組を行う。片方が襲われて死亡した場合、もう片方が事実を伝え、死体を回収するためだ。
8年も前のことになる。俺は当時、親父と組んで狩りをしていた。親父はコワバミドリに喉を食われて死に、俺は奴を取り逃がした。これでようやく、片が付いたよ。
いいか、探偵。コワバミドリは、鋭く頑丈な嘴を持っている。人の頭など、あいつらにとってノウサギのそれとかわらん」
アナタ「コワバミドリの恐ろしさは、あれだけでも十分思い知りましたから」
修「コワバミドリは何らかの方法で、悟の部屋に入り込み、奴を殺したのだ。それ以外に考えられない。
・・・にも拘わらず、灯のもとに怪しげな手紙が届いたばかりに、あいつは居もしない犯人に怯えている。まったく不憫でならんよ」
アナタ(この人はこの人なりに家族のことを考えていたんだな)
修「ここで、おさらいだ。
声を食ったコワバミドリは、一度に5文字しかしゃべれない。
食われた獲物が最後に発した3通りの言葉を繰り返す。
短い言葉で同じようなことしかしゃべらない奴は、コワバミドリだと思え」
アナタ「勉強になります」
修「最後にもう一つ、教えておいてやる。
コワバミドリの呼び声には一切返事をしないことだ。
コワバミドリは知能が低いが、自分の呼び声に相手が答えたかどうかは本能でわかる」
アナタ「しかし、修さん、一つだけずっと気になっていたがあるのですが・・・
僕たちは、なぜ襲われたのでしょうか。星影のペンダントを身につけていれば、コワバミドリからはこちらの姿が見えなくなるはずでは?」
修「こんなものは気休めだ。この石自体には何のチカラもない」
アナタ「巫女の血を引く娘がチカラを込めることで、その効果を発揮すると聞きました」
修「・・・知っているのか。だが、これは絶対安全の道具ではない。
呼び声に答えてしまえば、こちらの姿が見えるようになってしまうのだ。
奴が姿を見失うまでペンダントの効果は失われる。こいつを過信しないのが身のためだ」
アンタ「しかし、2羽目のコワバミドリは返事をしなかったにも関わらず、僕目掛けて突撃してきました」
修「お前はペンダントを付けていないだろうが」
アナタ「実は怒られると思って隠していたのですが、灯さんから悟さんの物を貸して頂いていました」
修「!!!」
アナタ「このペンダントは本当に・・・」
修「灯に巫女のチカラが受け継がれているのは間違いない。
一つ言えるとするならば、奴がペンダントにチカラを込めるフリをしているのか・・・」
アナタ「まさか・・・」
修「お前を呼んだことといい、灯の考えていることは俺にはわからん。
しかし、家を守る気ではいるようだ」
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