今日の神無迷路はどうかな?
休憩室で腰掛けると、少し緊張感がほぐれた。
部屋はシンプルかつ上品な調度品でまとめられており、リラックスできる静謐な空間となっていた。
狭いながらソファが2つあり、若林は立ったまま一行を見ていた。
「此度の一件につきまして、研究所を代表し、皆さまに深くお詫び申し上げます」
「謝罪だけで済ませる気か?もちろん賠償金も出るよな?」
「はい、それは後程手配いたします」
「それで、具体的にはいくら払ってくれるんだ?」
「黒川さん、賠償金の話は、無事にここを出られてからにしませんか?」
「若林さんの言う通りです。今最優先で考えなければならないのは、どう生き延びるかです」と、霜月が話を打ち切らせた。
「では、皆さんもご存じかと思いますが、客室には限りがあります。
黒川さん、4号室でいいですか?」
そう言って、若林は黒川の方を見た。
「ワシは4ちゅう数字は好きやない」
「待ってください。扉は指紋認証で開くのでは?」と霜月が割って入った。
「こちらに管理者用の鍵があります」と若林が言うと、
「あんたはあたしたちの部屋に勝手に入れるってこと?」と雪村が不安感を込めて話した。
「私は皆さんの部屋に入ったりはしません」
「信じられない!」
「もう十分だ!!!!」
若林が突然壁に拳を打ち付けた。
「自分だけが特別だなんて思いあがらないでください。私だって同じように危険に晒されている。それに、多くの優秀な科学者が今回の事で亡くなった。彼らの命に比べたら、あなたちの命なんて・・・。
今、あなたちには2つの選択肢があります。スタッフである私の指示に従うか、さもなければリーダーを一人選ぶかです」
言い終わると、若林は鍵をテーブルの上に投げつけた。
「若林さんに持ってもらったほうがいいと思います。ここの事情に詳しいでしょうから」と霜月が言った。
波立が賛同の声をあげると、黒川も「全員が同じ意見なら従うしかないやろな」と言った。
雪村は何も言わなかったが、黙認と見なしてもいいだろう。
「では、救助が来るまでは、私の指示に従ってください」
そう言って、若林はテーブルの上の鍵を取った。
「今夜は整備室で休みます。何かあれば、私のところへ来てください」
そうして短い会議のあと、全員が休憩室を後にして、各自の部屋で休むことに決めた。
休憩室の扉口で、若林が波立を呼び止めた。
「今、若い男性が君だけだ。これからいろいろと頼むよ」
「若林さん、心配しないでください。きっと大丈夫ですよ」
「だと良いけどね」
若林は整備室へ入った後、霜月と雪村が何か話し合っていた。
「雪村さん、関節炎ですか?」
「どうしてそんなこと聞くの?」
「すみません」
「あんたには関係ないでしょ!」
雪村はドアをバタンと閉め、自分の部屋に消えていった。
「彼女のどこを見て関節炎だと?」
「ずっと自分の膝を撫でていたので」
「単に寒いだけなんじゃないかな。ズボンとか履いてないし」
「え、履いてますよ」
「え、そうは見えなかったよ」
「肌色に近いタイツなので、気づかなかったんでしょうね。中には大抵フリースがついているから寒くないんですよ」
雑談を終えた後、霜月も自分の部屋へと戻って行った。
時計を見ると、針はちょうど9時30分を指していた。
波立は部屋に戻るや否やベッドに倒れこんだ。
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