今日のアパシー鳴神学園七不思議はどうかな?
倉田のシナリオ:カエルですか?ネズミですか?→エンディング№363~368を見る
1人目の福田のシナリオ:恋愛教→エンディング№127~139を見る
2人目は岩下明美を選択!
岩下は3年A組とのこと。
「あなた、私のことどう思う?」
- 優しそうな人
- 厳しそうな人
- 初対面なのでわかりません
- 愛に生きる人(2人目に選択した時のみ)
シナリオ:
窓枠の中で
岩下は、愛に生きる人と表現したくれた想いに応えて愛の話をしてくれる。
「あなた、話したこともない相手に恋をしたことはある?テレビのタレントや、あまり話したことのない同級生、電車の中で見かける人、近所のコンビニのスタッフとか。毎日見掛けるうちに、ついさっきまで意識さえしなかった存在が、ある日突然、特別な存在として胸の内に浮かび上がってくるこだってあるでしょうね。その人が、いつものようにさりげなく視界に登場するだけで、退屈な日々が燃え上がる恋の物語へと置き換わっていく。そういった経験はないかしら?」
「じゃあ、あなたが好きになった相手って、どんな人かしら?私に教えてくれる?」
「その相手って誰かしら?」
「ふうん、子供の頃に見たアイドル歌手ですって?いいじゃないの、可愛らしくて。ところで坂上君は、アイドルという言葉の語源を知ってるかしら?それはね、偶像という意味なの。人の手によって祀り上げられた偽りの紙の姿。そんなものに熱を上げる方も愚かだけど、祀り上げられた方も楽ではないのよ。プライバシーを奪われ、他人の期待に応え続けるストレスに常に晒されているのよ。その重圧に耐えきれず、人知れず悪事に走ったり、死に追い込まれる人も少なくないのよ。特に最近はSNSによって誹謗中傷が当たり前の時代だから、火のないところに立った煙のせいで覚えのない攻撃にあったりして、精神を病んだり命を絶ったりしてしまう。そんなy話を知った後でも、まだ純粋な気持ちでアイドルに憧れていられるかしら?うふふふ。
よく恋は盲目と言うでしょう?絵画の中の人物や造形物に本気で恋をしてしまう人もいるわ。キリシア神話に登場する自分の作り出した彫刻を愛したピュグマリオンの話は有名よね。現代でも二次元コンプレックスといって、アニメやゲームの登場人物に惚れこんでしまう人たちがいるじゃない。まあ周りがどうあれ、自分の心の中で愛情を傾ける限り、それが実在する人物かどうかは関係ないことなのかもしれないわね。これから私が罠すのは、そんな自分の心の中の人に恋をしてしまった、ある少女のお話よ」
不知火美鶴の席は教室の窓際で、彼女はこの席がお気に入りだった。
とても見晴らしがよくて、グラウンドから校門まで見渡せた。
不知火は合唱部に所属する2年生で、岩下が部長をしている演劇部と一緒にミュージカルを企画するイベントがあり、二人は仲良くなったとのこと。
引っ込み思案の不知火は、活発に校庭を駆け回る男子生徒たちの動きを、よく羨望の眼差しで見つめていた。
やがて、不知火は、ある特定の男子生徒に恋をした。
名も知らないその相手は、子供っぽくて、いつもテンションが高くて、がむしゃらで、無駄な動きが多い、どこにでもいるような愛すべき男の子だった。
どんな撞木でも彼が活躍した時のむじゃくな喜びようや、へとへとに疲れながらも最後までひたむきに全力を尽くす様子が心に引っかかっているうちに、いつの間にか意識するようになってしまった。
ある日、不知火はこの気持ちが恋なのではないかと気が付いた。
自覚すれば、もうその想いを無視することはできず、不知火の彼に対する思慕はどんどん加速していった。
彼の仕草の一つ一つにときめいて、遠くから眺めているだけで、全身に幸福感が押し寄せてきて、退屈な授業が愛しい彼との逢瀬のひとときに変わった。
彼を見ることができるのは、彼が体育の時間の時だけだったけれど、不知火にはそれで十分だった。
彼がなんという名前で、どのクラスに在籍していた、どんな部に入っていて、どこに住んでいて、どんな女の子が好きで、決まった相手はいるのか。その気になれば簡単に調べることもできたのに、不知火はそれをしようとしなかった。
不知火は一度だけ廊下で、その彼とすれ違ったことがあったが、不知火は顔を伏せて、足早に歩き去ってしまった。
不知火は、目に映る風景の中に走り回る彼を愛したのであって、そこに自分が介入することなんて考えもしなかった。
まるで教室の窓枠が大きな額縁で、彼はその絵の登場人物であるかのように。
不知火は、彼の正体をしって幻滅したり、失恋したときの衝撃で自分の心が傷つくのが怖くて嫌だった。
不知火は、自分の描いた世界の中だけで、彼と恋をしたかった。
そんな不知火と彼との一方的な逢瀬の時は、ある日あっけなく終わりを迎えた。
席替えのくじで廊下側の席を引き当ててしまった不知火は、彼の登場する風景を愛でる機会を、一瞬にして失ってしまった。
不知火は、最初は授業中に教室で目を閉じて、脳裏に彼のいる風景を思い描いた。
最初は思い通りの彼を描けずに困っていたが、次第に想像上の彼を自由に動かせるようになり、不知火は元の幸福感を取り戻すことができた。
不知火は、自分でも気づかなかったみたいだが、エア充体質だった。
才能が開花した観察力と想像力は、並大抵のものじゃなかった。
目を閉じて意識を集中するだけで、風景の細部まではっきりと思い描くことができ、そこを舞台に動き回る彼の姿も、とても生き生きとしたものだった。
それまで見たことのある光景を再生するだけでなく、不知火の中で新たな命を得た彼は、まるで生きているように動き回った。
そして想像力が増していくと、ついには彼を取り巻くクラスメイトたちまで再現され、それぞれにふさわしい役割を演じていた。
ただここまでくると、それはもう想像とは呼べず、不知火の作り出した妄想の世界。
窓際で見つめていたころは、体育の時間だけという限りがあったから歯止めがきいていたが、彼の姿をいつまでも好きなだけ眺めていられるようになった不知火は、もう現実の世界に帰ってこられなくなった。
授業中はもちろん休み時間まで不知火は妄想の世界に入り浸った。先生に注意されても、友達に呼ばれても、目を閉じて幸せそうに微笑んでいるだけ。
それは家でも続き、すぐ自分の部屋にこもってしまうし、食事の手はしょっちゅう止まるし、何時間もお風呂に入ったまま出てこない。
やがて不知火は、妄想ならリスクがないという打算かしら、それまで自分が登場していなかった世界に、ついに自分を登場させようかと考え始めた。
そして、ついに不知火は、妄想の世界で告白してみようと決心した。
実は、岩下は、不知火から何度も相談を受けていた。
「すいません、岩下さん、またお呼びだけしてしまって」
「いいのよ、気にしないで。私もあなたの話には巨にあるから。で、妄想世界の彼とはうまくいっているの?」
「しれが、まだ本当に私が飛び込んでしまっていいものか悩んでいるんです」
「この前は告白する決心がついたって言ってたのに、まだ出会ってもいないの?」
「突然私なんかが彼の前に現れたら迷惑するんじゃないかと思って」
「そんなことないわ。彼はきっとあなたのことを受け入れてくれる。それで彼の名前くらいはかわったんでしょうね?」
「いえ、まだ聞き出せなくて」
「呆れたわね。彼は仲の良い友達と伊一緒なんでしょ?彼らは何て呼んでいるの?」
「・・・」
「ニックネームもないの?」
「はい、友ダリはいつも、ようとかお前とかそんな呼び方ばかりなので」
「困ったものね。それだったらもう、あなたが出ていくしかないじゃない。一歩踏み出すのも大事じゃなくて?そのためにはあなたが必要よ。そして告白しちゃいなさい」
「告白して断られたら、私、もう生きていけない。ううっ・・・」
「泣かないで、不知火さん。私も考えるから。そうね、現実の世界に合わせればいいんじゃない?体育の授業はいつなのかはわかっているんでしょう?その授業の時に彼はグラウンドんじいるんだから、玄逸の彼とあなたの想いをシンクロさせるのよ。そして、そこであなたは彼と出会うの。今、彼が何をしているのか現実と妄想がシンクロすれば、あなた自身も妄想の世界に登場しやすいんかないかしら?」
「現実の世界とのシンクロ。ありがとうございました、岩下さん。私、やってみます」
「頑張って告白しなさい。必ず、あなたにとっていい返事が聞けるから」
決心がついてから、一日千秋の思いで待ちわびていた体育の時間がやっと訪れた。
もちろん窓から遠くなった不知火の目には見えないのだけど、彼女はいつものように目を瞑り、彼が生き生きと活躍する様を思い描いた。
「ねぇ、不知火さんはどんな形で彼に想いを伝えたと思う?」
- 近づいて話しかけた
- 窓を開けて好きだと叫んだ
- わからない
「悩んでも仕方ないわ、どうせ私の想像の世界なんだし」
不知火は妄想の世界で立ち上がって窓を開け、ありったけの勇気を振り絞って、グラウンドの彼に叫んだ。
「好き!あなたが好きです!」
告白した後我に返って、恥ずかしさのあまり顔を真っ赤にして、不知火はサッと窓を閉めた。
妄想世界の彼は、突然響き渡った大声の告白に反応して、不思議そうに辺りを見回した。
でも彼はその時、取り逃したボールが校門の外に転がり出て、それを取りに行ったところだった。
すると窓の外から、耳をつんざくような車のブレーキと、それに続いて派手な衝突音が響いてきた。窓ガラス越しに、グラウンドの生徒たちのざわめきと、悲鳴が聞こえてきた。
不知火はちょうど想像の世界から、現実に戻ろうとしていたところだったから、その音が現実と空想のどちらから聞こえてきたのか瞬時にはわからなかった。
でも、教室内の喧騒に気付いて顔をあげると、窓際の生徒が悲鳴をあげながら立ち上がり、あとずさっているのが目に映った。
植野先生が、「見るんじゃない!」と青い顔で叫んでいた。
でも、不知火は、先生の制止を振り切って猛然と窓に飛びついて、予想通りの不吉な光景を目の当たりにした。
ボールを取るために校門を出て、大型トラックに轢かれてしまった彼の姿を・・・
それは現実世界の出来事だった。
彼の級友は、警察の取り調べに対してこう語っていたそうだ。
「アイツ、いきなり車道で止まってキョロキョロと辺りを見回してたんですよ。何かを探しているというよりは、誰かに呼ばれたみたいに・・・」
「でも、誰も呼んでなんていなかったんですよ。僕たちは、そんな声は聞こえませんでしたから」
「体育の時間中、ボールに気を取られて交通事故に遭った程度では、うちの学校じゃ記憶にも残らないわね。一人の男子生徒の死は、すぐにみんなの記憶からも消えてしまった。それにしても、我を忘れて立ち止まってしまうほど、不知火さんの声は大きく響き渡ったのかしら。でも不思議なことに、彼女の声は誰も聞いていないのよ。おそらくは、死んだ涸れにだけ聞こえたんでしょうね。でもね、それほど強い想いがあったのなら、現実の世界で打ち明ければよかったのよ。そうすれば、彼も死なずに済んだでしょうにね。どことで、不知火さんなんだけど、私、相談を持ち掛けられているの。今、また気になる人が現れたんですって。今度は、今年鳴神学園に入学した1年生だっていうのよ。おとなしくて真面目そうなところが、死んだ彼とは真逆で一目惚れしてしまったんですって。相談されても、今度は殺してしまう前に告白しなさいって忠告するつもりよ。だから安心して、ふふふふ」
エンディング№310:彼を呼ぶ声
エンディング数 20/656 達成度3%
キャラクター図鑑 34/112 30%
中村晃久
赤川哲也
袖山勝
植野祐樹
不知火美鶴
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