今日の神無迷路はどうかな?
「小僧、なんでこんな場所に来た?」
ガラスドアから、帽子をかぶった年配の男性がゆっくりと現れた。くたびれた腹巻を巻いており、自由奔放そうな印象を受けた。50歳は超えていそうだ。
「こんにちは、アルバイトに来ました波立です」
「ワシぁあお前のような小僧をたくさん見てきた。身の丈に合わん目標を立て、失敗し、借金を抱え、ネットカフェを住居にアルバイト生活よ」
「私はまだ学生です」
「ならば人生はまだ長い。計画はしっかりと立てるべきよ」
「その、受付の手続きとかしないんですか?」
「せんよ。ワシもアルバイトやけん」
シャッター音がして振り向くと、霜月が波立たちに向かった携帯のカメラを向けていた。
「ただ撮っているだけなので、気にしないでください。続きをどうぞ」
「ポーズとか決めた方がいいんか?」
「今のままで十分素敵ですよ」
再びガラスドアが開き、ポロシャツを着た男性が入って来た。几帳面に分けられた七三に、どこか険しい表情を浮かべている。手にはフォルダーを持っていた。
「あの、写真は撮らないでいただけますか。今まで撮ったものも消してください」
「すみません」
「改めて、若林と申します。これから3日間、皆さんの案内役を務めます。
当研究所では電子機器の持ち込みを厳禁としています。そのため、皆さんの携帯電話を預からせていただきます」
「誰とも連絡取るなってか?」
長身の男性が尋ねた。
「このあと向かう場所はとても湿度が高く、携帯電話などの一般的は電子機器は簡単に壊れてしまいます。これは皆さんのためを思っての措置です。連絡手段については専用の通信機器を用意してあるのでご安心ください。ところで、あなたは?」
「俺は斎藤、こっちは雪村。いっしょに来た」
「そうですか。では、あなたたちは波立君と霜月さんですね?」
波立と霜月は頷いた。
「では、黒川さんに蕗屋君、そして今ここにいない小酒井さんを加えて、これで全員ですね。
次に皆さんの荷物をすべて預かり、研究所に入る前に一度中身の確認を行います。身に着けているものもすべて確認させていただきます」
- A:「そこまでやる必要があるんですか?」
→若林は言葉を濁した。「以前研究所に脅迫状が届いたことがあります。そのため、セキュリティチェックを厳しくせざるをえないのです。脅迫状はおそらくは実験に反対する保守派の人間が仕組んだつまらない悪戯でしょう」それを聞いたみんは口々に不満を漏らし始めた。すると若林は「お帰りなるなら止めはしませんよ」と言い切った。
- B:「持ち込んではいけないものはありますか?」
→「基本的に刃物や可燃物、爆発物など危険性のあるものが持ち込み厳禁です。あと実験に支障がないよう、録画録音機能がある機器も持ち込み厳禁となります」黒川がこんな面倒なこと聞いていないと不満を漏らす。すると若林は「お帰りなるなら止めはしませんよ」と言い切った。
「まあいいか、せっかく来たんやし」と黒川が折れた。
そもそもバスの最終便は行ってしまったので、今更帰れない。
ずっと黙っていた男性が手を挙げた。
「夕食は、いつ、どこで食べられるの?」
「研究所内に食堂がありますが、夕食までには時間があります。もう少し我慢してください」
若林は他に質問がないことを確認してから、ガラスドアの中に戻って行った。
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