今日の神無迷路はどうかな?
荷物検査の間、暇だった波立と霜月は廊下を歩いた。
「考え事ですか?」
「なんでもないんだ、気にしないで」
「若林さんが参加者の名前を呼んだ時、眉をひそめていたので何かあったかと」
「ちょっと昔のことを思い出しただけで、実験とは関係ないんだ」
「すっきりしません」
「昔、小酒井って名前の友達がいたんだ。今はもういないんだけどね」
「なるほど」
「小学生の時の話なんだけど・・・」
小酒井澪は、波立の幼馴染だった。家も近かったし、クラスも同じだったら、自然と一緒に遊ぶようになった。
ずっと一緒にいられると思っていたが、彼女は突然事故でこの世を去った。
「小酒井って名前を聞いた時に胸がぎゅっとなってね。
それで一瞬思ったんだ。若林さんが言った小酒井がもしかしたらって。死んだ人間が生き返るわけないのに」
「それはあり得るかもしれませんよ」
「ちょっと待って。死んだ人間が生き返る可能性があるって、そう言いたいの?」
「聞いたことありませんか?合土駅の都市伝説」
「ここへ来たのはアルバイトのためで、都市伝説なんて知らなかったよ」
「合土駅が閉鎖されたのは、科学では説明できない不可解な現象が起きたからです。
乗客から報告があったそうです。自身が把握している時間と、駅を出た後に確認した時間とでは大幅にズレがある、と」
「浦島太郎みたいに?」
「おそらくそれに近いかも。時間が巻き戻っていると気づいた乗客がいたんです」
「時間が戻るなんてありえないよ!」
「もし本当に時間が巻き戻るのなら、すでに起きてしまった事実を変えることができる。駅が閉鎖される前は、それ目当てに多くの人がここを訪れていたそうですよ。過去の過ちをなかったことにするため、あるいは、死んでしまった人を生き返らせるために」
霜月の話があまりにも馬鹿馬鹿しかったので、波立はここを立ち去ろうとした。
その時、遠くから足音が聞こえてきて、廊下の突き当りに人影が現れた。
9年前の夏の記憶が鮮明に思い出された。
「風鈴って昔は精霊さんとお話しするための手段だったんだって。だから短冊に願い事を書くと、その願いが風に乗って精霊さんに届くんだってさ」
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