今日の星影の館殺人事件はどうかな?
アナタ「確かに銃を放たれた弾痕が残っているな。
しかし、こっちは血痕も死体もない。誰かが片付けてしまったのか?」
灯「いいえ、コワバミドリは血は流れておりません。死んだ時、その体も残さないのです」
アナタ「生きとし生けるものには命を仕舞っておくための器が必要だろう」
灯「コワバミドリはなんと言いますか・・・」
アナタ(さっきコワバキドリを生き物と言ってたあたり、彼女は知らないのだろう。
血が流れていなければ、死体も残さない。そんな生き物はこの世に存在しないのだ。
と、なれば答えは一つ)
アナタ「それはコワバミドリがただの鳥ではなく、怪異だからだね?」
灯「怪異ですか?」
アナタ「この呼び方に合点がいかないなら、物の怪か妖怪とでも言おうか。
自然科学では説明できないチカラを持つ、奇怪で超常的な存在を指す言葉だ。
彼らは生き物ではないが、我々と同じく霊魂を持つ。
清い霊魂の最上位は我々人間が信仰し崇めている神や仏の類だ。彼らには害はなく、位が上がれば様々な吉事をもたらしてくれる。
しかし、死や病というった不浄に触れた霊魂は穢れに染まり、凶事をもたらすようになる。穢れるほど悪霊としての位が上がっていき、人の手で退治することが難しくなってしまうんだ。古くから鬼や妖怪と呼ばれ恐れられてきたモノたちがそれだ。
わかりやすく言えば、コワバミドリは霊魂の穢れた悪い妖怪というわけだ」
灯「ああそうです。普通の生き物ではないと思っていましたが、まさにやつは妖怪のそれです」
アナタ「しかし、妖怪退治の昔話は数多くあれど、今の時代に狩りで対抗する者がいたとはな。
怪異を退治するには、まずやつらの独自性を理解する必要がある。
例えば、ろくろ首は意識を失った女の首が伸びるという独自性を持つ妖怪だ。意識のある男の首が伸びる場合、これはろくろ首ではなく、見越し入道という。さらに意識が無くとも首が伸びず胴体から離れて浮遊する妖怪は飛頭蛮と呼ばれる。
今あげた3つは似た特徴を持つだけで、まったく別の妖怪だ。
見越し入道は鼬が化けた姿で、ろくろ首は愛した男に殺された女が化けたものだ。
鼬のいたずらと女の恨みでは霊魂の穢れ方が違う。悪霊としての位もね。
すると、当然退治の仕方も変わってくる。
あ、すまない。しゃべりすぎたな。
怪異を狩るという原始的な手法が今も残っていることに僕は大層驚いたという訳だ」
灯「すごい、見てもいないコワバミドリの正体を言い当ててしまうなんて、探偵様は怪異なるものに詳しいのですね」
アナタ「まあ、なんせ視えるものだから」
灯「視えるとは?」
アナタ「普通の人には見えないモノを見るチカラだよ。僕の目はなんとお化けが映るんだ」
灯「お化けですか!」
アナタ「まあ、コワバミドリは普通の人にも見えるようだから、僕のチカラは意味を為さないがね。
それに霊能力なら、助手の方が上だ。まあ、あいつに頼る気はないが」
灯「あの、探偵様。お化けが近くにいても教えてくださらなくても結構ですからね」
アナタ「ああ、わかった」
アナタ(ひとまずコワバミドリに関する情報をまとめておくか)
用語2
コワバミドリ(声喰鳥):人の声を喰らう怪鳥。佐比山にのみ生息する。食ったものの声を模倣して獲物を呼び寄せる。人の腰丈ほどの大きさで、鋭いくちばしを持つ。例の習性から子を呼ぶ親とも呼ばれている。体内に血液が流れておらず、死亡時は死体を残さず消滅する。
アナタ「それで被害者は何の研究をしていたんだ?」
灯「コワバミドリの研究です。兄はやつを全滅させることに人一倍熱を注いでいましたから」
アナタ「なるほど、机の上に鳥類の図鑑が置かれていたのはそのためか」
アナタ(山守聡はコワバミドリ専門の研究家だった)
人物
山守聡:山守家の次男でコワバミドリ専門の研究家。自室で亡くなっているのを朝の8時にすぐに発見された。
ANSWER №05(解決済み)
被害者の職業は?:被害者はコワバミドリ専門の研究家だった。怪鳥を絶滅させることに、人一倍熱を注いでいたらしい。研究用の部屋が隣にあるため、白衣を着ていたようだ。
アナタ(ここでもう一つの謎が生まれた。なぜ山守の敵であるコワバミドリが現場に居座っていたのかだ。
犯人が連れて来たのか、それとも別の誰かが?どこかからか入り込んでしまった線もあるか。
灯君以外はコワバミドリによる事故だと思っているようだから、この謎の解明が彼らの説得につながるかもしれないな)
QUESTION №09
コワバミドリはどこから来た?:密室の現場には、山守の敵であるコワバミドリが居座っていた。犯人か誰かが連れて来たのか、それとも、どこかから入り込んでしまったのだろうか。
***「ちょっと灯さん、誰なの、その人」
灯「こずえお姉さま」
こずえ「婚約者のいる身でありながら男を連れ込むなんて、山守の女はどうして皆こうも移り気なのかしら。
お客が来るなんて聞いていなくてよ。御帰り願いましょうか」
アナタ「お待ちください。ご挨拶が遅れてしまったのは本当に申し訳ありません。
灯君、僕も聞いてないぞ。好きなようにしていいんじゃなかったのか?」
灯「お姉さま、探偵様をお連れすると、今朝お話したように思いますが」
こずえ「へえ、彼が噂の・・・なんだかパっとしないから探偵だなんて夢にも思わなかったわ」
アナタ「お邪魔しています」
こずえ「わざわざ来ていただいて悪いけど、いくらがんばってもムダよ。
この事件はコワバミドリが起こしたただ事故なんですもの。家を荒らすのもほどほどにね」
灯「そんなはずはありません。なぜならこの家は星影のチカラに守られているのですから!
聡お兄様は事件当時も星影のペンダントをしていたはずなんです。
コワバミドリに襲われるなんて、考えられないではないですか!!!」
こずえ「では、あなたはあたくしたちの誰かが聡さんを殺したというの?
佐比山は関係者以外立ち入り禁止なのよ。殺人なんてこの館の人間にしかできないじゃない。
共に暮らす家族を人殺し呼ばわりするなんてどうかしてるわ!」
アナタ「あの、こずえさん、一つ宜しいでしょうか。
あなたは灯さんが受け取った手紙をご覧になりましたか?」
こずえ「ええ、それが何か?」
アナタ「あの手紙には新たな死者が出ることをほのめかした文がありました。
灯さんはそれを恐れているんです。
犯人の追跡は同時にあなた方を守ることにもつながるんですよ。
それに立ち入りを禁じられているとはいえ、山には戸はありません。
部外者の自分でも入ってこれたのだから、一概にあなた方の中に犯人がいるとも言い切れません。
事件の背景を明らかにするため、後ほど事件発生前後の行動を皆さんに聞かせてもらいます。ご協力、頂けますね?」
こずえ「山守の人間は生命の活動を終えたあと、土に還るのが習わし。
聡さんの遺体は土葬の手続きが終わるまで地下室に安置させてもらいましょうか」
アナタ「わかりました。
おがもはどこ?」
灯「先ほど、ユミさんを探しに行きました」
こずえ「そう」
アナタ「説得に成功・・・と捉えていいのかな?」
灯「こずえお姉さまは気難しいお方ですので」
アナタ「彼女が上のお兄さんの奥さんに当たる人なんだろうね」
灯「はい、私にとって義理の姉になりますね」
人物
山守こずえ:山守家長男の妻。今回の事件はウワバミドリによる事故だと主張している。気難しい性格のようだ。
アナタ「それにしてもあんなにピリピリされちゃ、萎縮してしまうな」
灯「仕方ないんです。お姉さまは妊娠してらして悪阻がひどく精神的な負担も大きいですから」
アナタ「悪いことを言ってしまった。元気な赤ん坊を産んでくれるといいな。
ああ、そうだ、もう一つ聞きたいことがある。
たしか星影のなんとかって」
灯「星影のペンダントですね。山守家の者たちが胸に着けているこれです」
アナタ「この石のチカラが何かを守ると言っていたような気がするが」
灯「星影の石には不思議なチカラがあるんです。これがあればコワバミドリから身を守ることができるんですよ。
コワバミドリは空を飛べません。近づこうとしても決して届かない星の光というのが、名前の由来です。
そうだ、しばらくここにいていただくのですから、探偵様にも一つお渡しします。
聡お兄様が着けていたペンダントがありますので、私取ってまいります」
アナタ「ならば自分で取りに行こう。遺体を調べられるのはこれで最後になるかもしれない。もう一度念入りに見てくるよ」
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