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チラシの裏~勇者弐位のゲーム日記

 ゲーム大好きな大阪のオバチャンのほぼゲームのことしか書いてない日記。10年やってたブログがプログラム書き換えられて海外の怪しいサイトに飛ばされるようになったんで、2017年4月に引っ越ししてきました。10年分の過去記事が36MBもあるし、データが壊れてるのか一部送れないものもあり、まだまだインポートの途中(;^_^   過去記事分は引っ越しで持ってきたものなので、表示が一部おかしいかもm(__)m  

第八章 四日目・本土 その1



 今日の十角館の殺人はどうかな?


 「本当に僕が一緒でもいいんですか」
 O市から亀川へ向かう途中、江南は念を押すように尋ねた。ハンドルを握る島田は、前方を見たまま幾度もうなづき、
 「構わないさ。千織さんと君は知り合いだったんだし、君は今回の怪文書の、いわば被害者でもあるわけなんだからね。第一君だって、ここまで来て置いていけぼりにされたんじゃあつまらんだろう」
 「そりゃあそうですけど」
 一昨日の守須恭一の忠告が、心に引っ掛かって離れないのだった。
 自分たちの単成す好奇心から、そこまで他人のプライバシーに立ち入ってもいいものなのかどうか。
 江南や守須が思うほど、自分と紅次郎は水臭い間柄ではないから、と島田は言う。守須の考え方や態度は少しストイックすぎるのではないか、とも。
 「そんなに気がひけるんだったらコナン君、この3日間で僕たちが、すっかり親友同士になってしまったことにしようじゃないか。で、僕が嫌がる君を無理やり引っ張ってきたと。どうだい?どれでいいだろう?」
 島田が真顔で言うのを聞きながら、つくづく面白い人だな、と江南は思う。
 ただ単に好奇心が旺盛なだけではない。自分などよりもずっと鋭い観察力や洞察力を、この人は確かに持っていると思う。一昨日、守須が言い出した中村青司生存説にしても、そのくらいのことはとっくに考え付いて検討済み、というふうだった。
 守須と島田の決定的な相違点は、守須がある意味で妙に保守的な現実主義者なのに対して、島田はまるで夢見る少年のような、ある種にロマンティストだということだろう。興味を抱いた現実の事件をめっぐって、奔放を想像力を働かせてお気に入りの可能性を導き出すと、あとはそれを一つの夢のようなものにまで昇華させてしまう。
 もしかすると島田にとってみれば、そうしてできあがった夢が現実の真相を一致するかどうかは二の次、三の次の問題にすぎないのかもしれない。
 紅次郎の家に到着したのは、午後3時を過ぎた頃だった。
 「今日はいるはずなんだがなあ」
 門の前で立ち止まり、島田がつぶやいた。
 「勤め先の高校はとうに春休みだし、登校日に当たったとしても、土曜だからもう帰ってるはずだし。暇でもっめったに外を出歩く人じゃないし」
 「電話で知らせておかなかったんですか」
 江南が聞くと、島田は「ああ、うん」と頷いて、
 「紅さんは、いきなり訪ねてこられるのが好きな人でね。もちろんまあ、相手にもよるんだろうけどね」
 そう言って、島田は片目をつぶって笑った。
 呼び鈴を鳴らすと、今日はすぐに返事があった。
 「おや、島田か。それに江南君、だったっけね」
 江南の姿を見てもとりたて訝しむ様子はなく、紅次郎は、二人を、先日を同じ奥の屋敷に通した。
 「ちょっと聞きたいことがあって来たんだ」
 島田は揺り椅子を前に傾けて、膝の上に両肘をついた。
 「その前に紅さん、一昨日はどうしてたの」
 「一昨日?」
 紅次郎は不思議そうに島田を見やり、
 「このところ毎日、家にはいるが、学校は休みだから」
 「一昨日、27日の夜、ここに酔ったんだけど、呼んでも出てこなかったからね」
 「そいつは悪いことをしたな。締め切り間近の論文があって、この2、3日は電話も来客も居留守を決め込んでいたんだ」
 紅茶のカップを二人に渡して、紅次郎は向かいのソファに腰を下ろした。
 「聞きたいことというのは?江南君が一緒のところを見ると、まだあの、兄の名を騙った悪戯の手紙に関わっているのかな」
 「そうだよ。しかし、今日来たのはちょっと違うんだ」
 島田は一呼吸おいてから、「実はね」と続けた。
 「亡くなった千織さんについて少々、立ち入った話が聞きたいんだよ」
 カップを口に運ぶ紅次郎の手が、ぴたりと止まった。
 「千織について?」
 「嫌な質問をするぜ、紅さん。許せないと思ったら、殴ってもいい」
 そして島田は、単刀直入に切り出した。
 「千織さんは、ちょっとして紅さんの娘だったんじゃないのかね」
 「馬鹿な。いきなり何を言い出すんだ」
 紅次郎は即座にそう答えたが、江南には彼の顔から一瞬、血の気が引いたほうに見えた。
 「違うのかい」
 「当り前だ」
 紅次郎は憮然と腕組みをしている。その顔をじっと見据えながら、島田は続けた。
 「無礼は承知の上だ。起こるのも当然だと思う。けれどもね、紅さん、僕はどうしても確かめておきたいんだ」
 「戯言もたいがいにしてくれ。何を根拠にそんなことを言う」
 「確かな証拠なんてないさ。ただ、いろいろな状況が僕にそう囁きかけてくるんだ。
 一昨日、コナン君と安心院に行ってきた。行方不明になっている吉川誠一の細君と会うためにね」
 「吉川の奥さんと?何でまた」
 「例の怪文書に触発されて、去年の角島の事件について少し、調べてみたいと思ったのさ。そうして僕らが辿り着いたのは、中村青司氏は生きている、彼があの事件の犯人だったのだ、という結論だった」
 「馬鹿を言うな。兄は死んでいる。私は死体を見た」
 「真っ黒焦げの死体を、だろ」
 「それは・・・」
 「あれは吉川誠一の死体だった。青司氏がすべての犯人で、和枝さんと北村夫妻を殺したあと、吉川を身代わりに焼死させて自分はまんまと生き延びた、というわけさ」
 「相変わらず想像力のたくましいことだな。そのたくましい想像力が、私と義姉とを結びつけたわけか」
 「まあね」
 島田は臆する気配もなく言葉を接いだ。
 「青司氏と犯人だとすると、彼はなぜ、あんな事件を起こすまでの精神状態に追い詰められてしまったのか。いつだったか、紅さんはこう言ってったっけねえ。兄貴は和枝さんを熱愛し続けているが、あの執着ぶりは尋常じゃない、と。彼が若くしてあんな島に引きこもってしまったのも、元はと言うば、和枝さんを自分だけのそばに置きたかったからだ。彼女を島に閉じ込めてしまいたかったからだ、ってね。そんなにも愛していた妻を自らの手で殺してたんだとすると、動機として考えられるのは普通、嫉妬しかない」
 「何だってそれを、私と義姉の関係に短絡させる必要がある」
 「吉川の細君から聞いたんだが、青司氏は自分の娘のことを、あまり可愛く思っていなかったらしいね。ところが一方、彼は和枝さんを熱愛していたという事実がある。ならば、二人の間に生まれた子供、しかも女の子の千織さんのことが可愛くないはずがあり。これはつまり、青司氏が、少なくとも娘の父親が自分かどうかを疑っていた証拠じゃないだろうか」
 「兄は、変わった人間だったんだ」
 「変わってはいても、妻を愛する人間ではあった。その妻が産んだ自分の娘を愛せなかったというところには、やっぱり何かあると思わざるをえない」
 きっぱりと言って、島田は続ける。
 「島に閉じ込められていた和枝夫人。それでも彼女との接触が可能であった若い男、千織さんの誕生と前後して悪化した兄弟仲・・・」
 「話にならんな。もう充分だろう、島田。私は否定するだけだよ。そんな事実は断じてない」
 腹立たしげに行って、紅次郎は鼈甲縁の眼鏡を外しが、膝の上に置いた手が、かすかに震えているのが分かった。
 「だったら紅さん、もう一つ聞いてみようか」
 島田が言った。
 「去年の9月18日、青屋敷が燃えるの前の日の出来事だ。日頃滅多に酒を飲まない紅さんが、あの夜突然僕に電話してきた。外へ飲みに行かないかってね。二人で何軒がはしごして、紅さんはすっかり酔い潰れてしまった。
 そして酔いつぶれた挙句、しまいにあなたは泣き出してしまった。僕がこの家まで送ってきて、二人ともここのソファで眠ったんだが、そのとき紅さんは泣きながら、譫言みたいにこう繰り返していたんだ。『和枝、許してくれ。私を許してくれ』って何度もね」
 「そんな・・・」
 紅次郎の顔色が目に見えて変わった。島田はさらに続けて、
 「あの時は深く考えてもみなかったさ。僕もかなり酔ってたしね」
 島田は大きく一つ息をついた。
 「今改めて考えるに、9月19日の夜の時点で、紅さんはすでに角島の事件の発生を知っていた、そうだろう?」 にほんブログ村 ゲームブログ 今日やったゲームへ
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女性
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大阪のオバチャン
趣味:
ゲーム
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 ゲーム大好きな大阪のオバチャンです。
 やりたいゲームは発売日に買ってるが、プレイする時間がまったく足りてないでの、クリアするのはいつになるのやら・・・

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