屍人荘の殺人 〈屍人荘の殺人〉シリーズ (創元推理文庫)
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今日の
屍人荘の殺人はどうかな?
男4人と女6人の合計10人が2台の車に分乗してやってきたのは、山を分け入って10分ほどの場所に立つ廃ホテルだった。
荷物を下ろした葉村たちは、幽霊役を演じる演劇部の星川と名張が車の中で着替えるのを待ち、中に入った。
進藤が先頭に瓦礫の散らばった廊下を進み、ロビーらしき空間に着いたところで荷物を下ろして準備を始める。
高木と静原は幽霊役の二人の衣装やメイクのチェックに付きっきりで、進藤と下松は演技の段取りを確認、重元は機材のチェックをしている。葉村たちは、裸足の役者が怪我をしないようにあたりのゴミを拾いながら、邪魔にならないように部屋の隅でおとなしくしていることにする。
よく見てみると、ロビーの片隅のは所々に落書きがあり、煙草の吸殻、コンビニパンの包装などが捨てられている。そして、他の部屋や廊下では散らばっている瓦礫が、スペースを確保するためか明らかに端に寄せられているのだ。まるでここで誰かが生活していたようだ。
一同が撮影の流れを確認している間、葉村と明智は、廊下にいた高木に近づく。
その時、女性の悲鳴が響いた。撮影隊がいる部屋からで、駆け付けてみると、名張が
「蜥蜴がいたの、追い払って!」とヒステリックに訴えている。
進藤が靴で瓦礫をかき分け、「何もいないよ」と言った。
「ちゃんと探してよ」とキンキンした声で名張が訴えたので、明智が
「我々に任せてもらおうか。動物探しは探偵の基本だからね」と二人の間に割って入った。
明智と葉村が瓦礫をひっくり返して、蜥蜴を探し始めると、小さな注射器と黒い革張りの手帳を見つけた。
手帳のページをさっとめくると、文字がぎっしりと書き込まれている。日記というより膨大なメモといった感じだ。
「何、それ」と重元が覗き込んできた。
重元はしばらくページをめくっていたが、何食わぬ顔で自分の鞄に手帳を放り込んだ。
名張が、「もう大丈夫」と言ったので、撮影が再開された。
午後4時半になったころ、進藤が「今日はこれでいいだろう」と言ったので、撮影は終わった。
後片付けをし、荷物を持って廃墟を後にした。
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