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チラシの裏~勇者弐位のゲーム日記

 ゲーム大好きな大阪のオバチャンのほぼゲームのことしか書いてない日記。10年やってたブログがプログラム書き換えられて海外の怪しいサイトに飛ばされるようになったんで、2017年4月に引っ越ししてきました。10年分の過去記事が36MBもあるし、データが壊れてるのか一部送れないものもあり、まだまだインポートの途中(;^_^   過去記事分は引っ越しで持ってきたものなので、表示が一部おかしいかもm(__)m  

第二章 一日目・本土 その5



 今日の十角館の殺人はどうかな?


 お前たちが殺した千織は、私の娘だった。


 守須恭一は低いガラステーブルからその手紙を取り上げると、何度目かの吐息を漏らした。
 昨年の1月、ミステリ研究会の新年コンパの三次会。あの時守須は、同級の江南とともに途中で場を辞した。そのあとの、あれは出来事だった。
 封筒の裏に記された差出人の名は、中村青司。半年前、角島で殺害されたという男だ。守須にしてみれば、会ったことも顔を見たこともない人物だった。
 O市駅前の目抜き通りを抜けた、港に近い一角。巽ハイツという独身向けワンルームマンションの5階の一室である。
 守須はテーブルのセブンスターに手を伸ばした。
 (角島の連中は今頃何をしているだろう)
 壁際に置いたイーゼルに、描きかけの油絵が立ててある。色あせた木々に囲まれて、ひっそりと時を見つめる幾体もの摩崖仏たち。国東半島の、ほとんど人も訪れないような山の中で見つけた風景だった。まだ木炭のデッサンの上に薄く彩色した程度の状態である。
 そこへ電話のベルが鳴りだした。もう午前0時が近い。
 「やあ守須か」
 「ああ、ドイル」
 「その名前はよしてくれって言ってるだろう。昼頃には一度電話したんだけどな」
 「絵を描きに、バイクで国東まで行ってたんだよ」
 「そっか、お前のところにおかしな手紙が来てないか」
 「中村青司からのだろう?そのことで30分ばかり前に電話したんだよ」
 「やっぱり来てるのか」
 「今、どこにいるの。良かったらうちに来ないかい」
 「そのつもりで電話したのさ。近くまで来てるんだ。手紙の件で話したいことがあって、知恵を貸してほしいんだ」
 「貸すほどの知恵もないけど」
 「3人寄れば何とかってね。あ、つまり連れが一人いるんだ。一緒に行ってもいいだろう」
 「構わないよ。じゃ、待ってるから」


 「なんのつもりだか分からないけど、趣味の悪い悪戯だなと思って」
 「『お前たち』って書いてあるよね。だから、僕のところだけじゃないかもしれないとは考えていたんだ」
 「そっちのほうはどうも、コピーみたいだな、俺んちに来たやつがオリジナルってわけか」
 「多分これとまったく同じものが東の家にも届いている。電話して確かめてみた。それから中村紅次郎氏の許にも文面は少し違うが、同じ中村青司名義の手紙が来ていたんだ」
 「中村紅次郎というと中村青司の弟の?」
 「ああ、『千織は殺されたのだ』っていう文面だった、今日はね、彼を訪ねて別府まで行ってきたんだ。島田さんとはそこで知り合ったんだよ」
 「順を追って話してくれよ」と守須が言ったので、江南は今日一日の出来事を口早に語った。
 「相変わらず、好奇心に足が生えたみたいな奴だなあ」
 「いったい誰が、何のつもりでこんなものをばらまいたのか、どう思う」
 「告発、脅迫、そして角島事件に対する注意の喚起か。うん、なかなかいい線だと思うよ。
 あの島田さん、一つお聞きしたいんですが、去年の角島の事件が起きた時、中村紅次郎氏はどうしておられたんでしょう?」
 「それはアリバイといういう意味で?」
 「はん、いきなり鋭いアプローチをしてくるなあ。青司と和枝夫人を殺して一番利益を得る者は誰か。そりゃあ紅さんに決まっている」
 「そうです、失礼かもしれませんが、やはりまず疑われるべきなのは紅次郎氏じゃないかと」
 「しかし、守須君、その辺も警察も馬鹿じゃない。紅さんのアリバイももちろん洗われたよ。で。残念ながら彼には完ぺきな不在証明があった。
 9月19日の夜から翌朝にかけて、紅さんはずっと、この僕と一緒にいたんだな。珍しく電話が掛かってきてね、飲みにいかないかって。別府で夜中まで飲んで、そのあと僕は紅さんの家に泊ったんだ。朝になって事件の報せを受けた時も一緒にいた」
 「完璧ですね、たしかに」
 「もっと意見が聞きたいな、守須君」
 「そうですね。目新しい考えはこれといってはないんですけど、ただ当時新聞で事件の記事を読んだ時から、ずっと思っていることがあるんです」
 「何かな」
 「僕にはね、現場からなくなった和枝夫人の左手首、あれが事件の最大のポイントであるような気がするんですよ。もしもその行方が判明すれば、それですべてが見えてくるような」
 「ふむ、手首の行方ねえ」
 江南が「とろこで守須、研究会の連中が角島に渡ったのは知ってるか」と問うた。
 「うん。僕も誘われたんだけどね、やめにした。あんまり悪趣味だと思って」
 「連中、いつ帰ってくるんだ」
 「今日から1週間っている話だよ」
 「1週間もテントでか」
 「いや、つてができたんで、例の十角館に泊っているんだ」
 「そういやあ紅次郎氏は、あの屋敷を手放したって言ってたな。どうも胡散臭い感じがしてならないな。死者からの手紙が来て、それと入れ違いに死者の島へ向かう」
 「嫌な偶然ではあるね。気になるのならまず、あの三次会に参加した他のメンバーの家を全部当たってみることだろうね。東以外のところにもこの手紙が届いているかどうか、確認しておく必要があるだろう」
 「それはそうだな、春休みでどうせ暇にしてるしなあ。探偵ごっとに打ち興じてみるのも悪くない」
 「江南らしいね。それなら、ついでにどうだろう、角島事件のほうも、もうちょっと突っ込んで調べてみたら」
 「調べるって、具体的にどうやって」
 「例えば、姿を消した吉川っている庭師の家を訪ねてみるとか」
 「しかし・・・」
 「いや、コナン君」と島田が口を挟んだ。
 「そいつはなかなか面白いぞ。吉川誠一は安心院に住んでいたって言ったろう。そこには彼の細君がまだいるはずで、その細君っていうのは昔、角島の中村家に勤めていたらしいんだ。つまり、中村家の内部事情を知る唯一の生存者ってわけさ。」
 「住所はわかるんですか」
 「そんなもの、調べりゃわかるさ。コナン君は明日、午前中に手紙の確認をして回る。そのあと、午後から僕の車で安心院へ行く、どうだい」
 「OKです。守須は?お前も一緒に来たら」
 「行ってみたい気もするけど、あいにく今忙しいんだ。絵を描きに行っているって言っただろう」
 「国東の摩崖仏か、そういえばお前、好きだったっけな。何かコンクールにでも出そうと?」
 「いや、何となく思い立ってね。花が咲く前のその風景をどうしても描いてみたくなって。だから、このところ毎日あっちへ通い詰めなんだよ。
 とりあえず僕は、アームチェア・ディテクティブ(安楽椅子探偵)を気取らせてもらうよ」 にほんブログ村 ゲームブログ 今日やったゲームへ
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勇者弐位
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大阪のオバチャン
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 ゲーム大好きな大阪のオバチャンです。
 やりたいゲームは発売日に買ってるが、プレイする時間がまったく足りてないでの、クリアするのはいつになるのやら・・・

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