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今日の
かまいたちの夜×3はどうかな?
10分後、ペンション「シュプール」の泊り客とスタッフは、全員1階の談話室に集まっていた。
死体を見たのは、透、真理、小林だけだ。
「ねえ、いい加減何があったか教えてくれてもいいんじゃないの?」と、いらだった口調でみどりが言った。
「死んでるんです。あそこでバラバラになって、死んでるんです」と、透が答えた。
「バラバラって?」とみどりが言ったので、透は「首も手も足も、みんな切り離されてあそこに落ちてるんです!」と、叫ぶように言った。
「田中さんって人なの?」と、みどりが尋ねる。
「よくわからないけど、あの人だと思います」
「それってよくできた人形なんじゃないの?」
「人間と人形を間違えたりしませんよ」
「あれは人間だ。血も付いていた」と、小林が断言する。
「そういえば聞いた事あるよ、かまいたちのこと」と、美樹本が話し始めた。
「このあたりでは昔から、何もないところで服が切り裂かれたり、怪我をしたりすることが知られていたんだ。土地の人たちは鎌を持ったイタチのような生き物のしわざだと考えて、かまいたちと呼んだ」
「そのかまいたちのせいで、田中さんはバラバラにされたと言うんですか」と、小林は言った。
「かまいたちって自然現象なんでしょ。真空状態が発生して、切れたりするって聞いた事あるけど」と、真理も言った。
しかし、美樹本は動じず、「一応そういう説明はなされている。でも、妖怪か自然現象かわからないが、何かそういったことが起きるのは確かなんだ」と言った。
「でも、人間がバラバラになるとは思えませんが」と、透が言うと、
「妖怪の仕業なんだとしたら、どんなことだって考えられる。
自然現象だと考えてみると、これほどの激しい風なら、めったに起きないような恐ろしい真空ができたとしても不思議じゃない」と、美樹本が言った。
「プラズマの仕業だわ!」と、怯えた表情の亜希が叫んだ。
「よくわからないけど、そうに決まってるわ」と、亜希は確信した様子でしゃべっている。
「じゃあ脅迫状はどうなるのよ。あれを書いたのは人間でしょ」と可奈子が言うと、亜希は泣き出してしまう。
「脅迫状って何のことや?」と、香山が口を挟んできた。
今更隠し立てしても仕方がないので、小林は脅迫状の一件を話し出した。
聞き終わった後、全員は絶句していた。
「とにかく上にあるのがほんまに死体なんやったら、はよ警察に連絡せなあかんわな」と、香山が言った。
それを聞いた小林は、慌てて電話に駆け寄り、受話器を取って耳に当てる。しかし、すぐにガチャガチャとフックを押し始めた。
「駄目だ。電話が通じていない。多分どこかで電話線が切れたんでしょう」と、小林が言った。
(電話が掛けられないということは、吹雪が止まない限り、警察に連絡できない。だけでなく、ここから降りることもできないということだ)
「わし、携帯電話があるんや」と、香山が言ったが、
「この辺りは電波が届かないんです」と、小林が言った。
「そしたら一体どないしたらええんや。人殺しがこの辺うろついとるっちゅうのに」
(かまいたちやプラズマだと騒いでいたが、あれは殺人だと考えるのが一番自然だ。誰かが田中さんを殺し、その死体をバラバラにしていったのだ。そして、この天候を考えると、その犯人はまだこの辺りにいる可能性が高い)
そう思った透は、「この天気で、山を降りることはできますか?」と聞いたが、小林と俊夫は「無理だろ」と言って、首を振った。
「歩いて降りたら途中で凍死、車だったら運がよくても立ち往生。運が悪けりゃ沢に転落しかねない」と、俊夫が答えた。
「じゃあ犯人はこのペンションの中に隠れようとするんじゃないでしょうか?」と、透が言うと、全員が息をのんだ。
「じゃあ死体をバラバラに切り刻んだような奴と、一晩過ごすことになるってのか?」と、怒ったように俊夫が言った。
「人殺しがおるかもしれんっちゅうのに、安心して眠れるわけあらへん。何とかせな」と、香山が言った。
「どうするんです?」と、小林が尋ねると、
「そら、捕まえるしかないやろ。警察に来てもらえん以上、自分らで捕まえなしゃあないやないか」と、香山が答えた。
「人を殺してその死体をバラバラにするような凶悪な人殺しですよ?下手に手を出すより、ここでみんなでじっとしてた方が良くありませんか?」と、美樹本が反論した。
「ああ、あんたはこのままここでずっと起きとけっちゅうんかい。寝とる間に皆殺しにされるかもしれへんのやで」と、香山がとんでもないことを言いだした。
「戸締りだけはしっかりしておく必要があると思います」と、透が言うと、
「もう中に入り込んどったらしゃあないやないか」
「一体いつどこから入ったっていうんです?」と。小林が驚いた様子が言った。
「そんなことわしゃ知らん。そやけど、現に人一人殺しとるやないか。わしらが気づかんうちに、入って来たっちゅうことやろ?
そや、窓が割れとったやろ?窓から入って来たんやとちゃうか?裏手はあんまり除雪してないから、2階の窓から入るんも、難しゅうないんとちゃうかな」
「だとしても、犯人はまた窓から外へ逃げたんじゃないですか?ドアの鍵はかかったままだったし」と、透が言った。
「ここのドアは押しボタン式の鍵やで。入って来たんは窓でも、その後はボタンを押して閉めたら済むことや。2階に空き部屋に隠れることも、わしらが2階に行っている間に下に降りることもできたかもしれん」
確かに扉の鍵は香山の言う通りだ。とはいえ、2階の部屋はさっきみんなで調べたばかりだ。廊下をうろうろしている自分たちの目を盗んで1階へ降りたとは考えにくい。
「みんな武器になるものを持ったほうがいいんじゃないかしら?」と、真理が口を開いた。
それを聞いたみんなは、その意見に賛成した。
結局、みんなが手にしたのは、スキーのストック、果物ナイフ、モップの柄だった。
「何人かでチームを組んで、しらみつぶしに調べるんや」と、香山が言い出した。
男は、透、香山、俊夫、小林、美樹本の5人。
女性陣は全員見送りだ。
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