今日の神無迷路はどうかな?
明かりのついた建物の前で若林が立ち止まった。
「ここがセキュリティセンターになります。皆さんの事を登録してきますので、ここで少しお待ちください」
そう言うと、若林は建築現場でよく見るプレハブ小屋の中に入っていった。
若林が去った後、みんなは周囲を探索し始めた。
波立はプレハブの側までぶらぶらと歩いた。
プレハブの外壁にはこの場所の簡単な地図が掛かっていた。
霜月が波立の側で呟いた。
「この洞窟の形状、蝶に似ていると思いませんか?」
「確かにそうだね」
地図に描かれた洞窟の輪郭は、羽を広げた蝶のようだった。
「なんだかツングースカ大爆発を思い起こさせますね」
「ツングースカ大爆発?」
「1908年にシベリアで起きた謎の大爆発のことです。数百平方キロメートルの森林が平らになったというもので、爆心地に蝶の形をした爆発跡が残っていたそうです」
「ロシアの爆発実験か何かだったのかな?」
「この規模の爆発を起こすは、約2000万トンものTNTが言われてますが、当時の技術では不可能だったので、謎の事件と呼ばれているんです」
「でも、この洞窟は政府が科学実験のために爆破して作った人工的なものだよね?ここの形が蝶に似ているのは偶然なんじゃないかな」
「どうしてこの科学実験が政府主導だと思うんですか?」
「求人サイトに書いてあったじゃないか。この科学実験は国家プロジェクトだって」
「この研究所のウェブサイトのドメインは、.go.jpではなく.co.jpだったので私営のものということになります」
その時、手に数枚のカードを持った若林が戻って来た。
「お待たせしました。これが、これから下で使うことになる皆さんの情報が登録されたIDカードです」
渡されたIDカードには、顔写真と番号が印刷されていた。
「ここで働くんやないんか?」と黒川が言うと、
「それについても説明いたします」と若林が答えた。
「皆さんには、エレベーターでさらに下に降りていただきます。
私たちの実験はここよりさらに1900メートルほど深いところで行われています」
霜月が「地下2000メートルに位置に研究所があるということになりますね」と素早く計算して言った。
「おい、ここでどんな実験をしてるのか、そろそろ教えてくれよ」と斎藤が言い出す。
「下に降りたら説明しますから、皆さんはついてきてください」と若林が答えた。
エレベーターシャフトに近づくと、エレベーターは3畳ほどの大きさで、中に定員10名と張り紙が貼ってある。
若林が全員に向かって言った。
「荷物もありますし、積載量に余裕を持たせたいので、2組に分かれて降ります。最初の組はそのまま実験室に行き、次の降りる組は先に客室で休んでいただきます」
「今日すぐ実験するのか?」と斎藤が尋ねると
「今日中に装置のテストを行いたいので。では誰から先に降りますか?」と若林が答えた。
「降ります」と霜月が手を挙げて、「良志さんもいっしょに降りるべきだと思います」と言った。
「まさか彼女を一人で行かせるんか?」と黒川が他人事のように言った。
蕗屋がポテチを食べながら「僕も降りるよ」と言った。
「あと一人で1組とします」と若林が言った。
どうせ降りることになるんだから、と思った波立は手を挙げた。
若林が機械を操作すると、エレベーターの扉が開いた。
波立、霜月、蕗屋、若林の4人で乗り込んだ。
「30分ほどで戻りますので、ここで待っていてください。私がいない間の事は黒川さんにお任せします」
若林が振り返り、黒川に言った。
「ワシがいれば問題ありませんよ」と黒川が答えた。
エレベーターが動き出した。
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