今日の神無迷路はどうかな?
天井から次々と振動音が伝わって来た。顔を上げて見ると、天井のホコリが振動で舞い上がっている。
清水が顔をしかめながらモニターのデータを見つめて言った。
「妙だ。最新のデータが全部0・・・まさか機械の故障?」
「それがどうしたっていうんですか?」
「データが1を示した場合、それはスクリーン上にボールが形成する痕跡が2本の明瞭な線になる傾向があることを意味する。このことは蕗屋君の意識状態が現時点で非常にクリアであることを示している。
しかし、データが0であれば、ボールがスクリーン上に形成する痕跡は干渉縞に近いものになる。あまり言いたくはないが、蕗屋君が意識を完全に失っている可能性があるということかもしれない」
「意識を失っている?」
「普通じゃないな。意識の明瞭さはある程度調節でいるが、連続して0が表示されてのは初めてだ」
「蕗屋さんの意識の明瞭さをコントロールできるんですか?一体どうやって?」と霜月が尋ねる。
「特別な装置を使って彼の脳神経を刺激しているんだ」
「つまり、蕗屋は死んだってことですか?」
「不吉なことを言うな。多分、機械の故障だろう」
「見に行きましょう」と霜月が行動を起こそうとすると、清水が止めた。
「今行っても無駄だ。
このグラフに示されたデータは、10分後の状況なんだ。
遅延選択実験を知ってるだろう?」
「粒子が二重スリットを通過した後で観測するかどうか決める実験ですよね。粒子がスリットを通過した後に観測装置を設置しても、波動関数の収縮を引き起こすことになる。つまり、未来の決定が過去の結果に影響を与えるかのようになる」
また重苦しい振動音が響いた。
「ゴムボールが二重スリットを通過する際の検出画像は、蕗屋君に表示されるまでに10分のタイムラグがある。つまり、画面に映るデータは、10分後の蕗屋君の意識状態なんだ」
時計の文字盤は7時30分を示していた。
「継続的に0となるデータを始めて捉えてから、どれくらい時間が経過しましたか?」と霜月が尋ねた。
「5分だ」
「つまり、あと5分で何かが起こるというわけですね」
「今すぐにでも蕗屋を助けに行かないと!」
「そうだな、せめて彼が無事かどうか確かめに行かないと」
清水がポケットから鍵を取り出そうとしたその時、エレベーターから物音がした。
エレベーターはいつの間にか、この階で止まっていた。
エレベーターの扉が開いたが、中には誰もいない。
扉は静かに閉じて、上の階へと昇って行った。
「おかしい」
清水がそう口にした途端、周囲にかつてないほどの轟音が響いた。
地面が激しく揺れ、天井の破片が次々と落ちて来た。
清水はバランスを崩し、尻餅をつき、その際手から鍵が零れ落ちた。
「地震か!」
「二人とも急いで机の下に隠れろ!」
突如エレベーターから洪水のような巨大な水流が押し寄せて来た。
「まさか地下水?早く何か固定された物に掴まって!」
霜月の声はあっという間に激しい水の音に飲み込まれてしまった。
水はすぐに波立の頭上まで押し寄せて来た。
そして、すべてが深く、死んだような静寂に包まれた。
波立は音も光もない虚空を漂っている。
心が徐々に穏やかになる。幼い日の記憶が次々と脳裏に浮かびあがってきた。
ある夏の日の午後、1匹の蝶が陽光が差し込む廊下に静かに舞い込んだ。
捕まえようと手を伸ばすと、蝶は軽やかに飛んで行った。
蝶は太陽の光を受けて、青く輝いていた。
そうだ、ここは地下2000メートルの研究室だ。
絶望に打ちひしがれていると、あの青い蝶を見た。
指先が蝶に触れようとした瞬間、光が激しく燃え輝いた。そして、すべてが霞んでしまった。
まるで何かに引き寄せられるように、未知の方向へゆっくりと流されていく。
エンディング:
青い蝶
心印をゲット!
実績:
青い蝶をゲット!
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